Junky Funk

Junky Funk (CPJ Compositions for keyboards)

Although it originally was the name of a CPJ composition and the first band, Junky Funk now functions as the name of one concept of CPJ compositions,which are written specifically for keyboard instruments.

Junky Funkとは、松井秋彦のCPJ の楽曲の中で、キーボードやピアノによって書かれた、鍵盤楽器の特徴を生かしたコンセプトです。

☆Junky Funk (CPJ written for keyboards)


1.JF001.Junky Funk (東京, Japan) video1 video2 video3
2.JF002.Funky Junk (New York,NY.U.S.A.) video1video2
3.JF003.Straight Flash (Berlin,Germany) video1 video2 video3
4.JF004.Jack-in-the-Box (Graz, Austria) video1
5.JF005.J&F (Boston,MA.U.S.A) video1
6.JF006.Metropolis (Scolopi, Italy)video1
7.JF007.Out-of-the-Blue (Coll Boixols,Spain) video1 video2
8.JF008.Cyberjaya (Cyberjaya, Malaysia)video1
9.JF009.Brand New Life (Birmingham,U.K.)video1 video2
10.JF010.Fujack (Toronto,Canada)


JunkyFunkBAJ713Junky-Funk-HeyFjord cpJ Fest XI JOKER(key) FingersFjord cpJ Fest XI JOKER(key)bestNORD11873465_932292886812582_2992058311204131223_n

もともとはJunky Funkのコンセプトはそのままバンド名として機能していました。CPJ界最初のバンドJunky Funkは、松井秋彦のピアノ、キーボードによる楽曲を、時にはクールに、時にはパワフルに演奏する。1stアルバム、「Jack-in-the-Box」(イーストワークスEWCD0018)では、立川智也の共同プロデュースにより、一般的に最も難解とされる松井秋彦の楽曲を明るくヒップに。
Jazz Life (2000年4月号94~95カラーページ)でで大々的に紹介される。 Junky Funkによって奇跡の出会いを果たした「鉄壁のリズム隊」(立川智也(b)=嶋村一徳(ds)ライン)が、この臨界点サウンドに余裕とグルーブを持たせた事の功績は大きい。N.Yから帰国し、加入した音川英二(ts)が、サウンドに幅と、柔軟さを齎し、現在のJunky Funkサウンドに。その後、2ndアルバム「Bird’s Eye Prospects」(キャスネットCNST-7001)が、元Soul Bossa Trio の松本俊行と立川智也のプロデュースにより実現。これもジャズライフ(2003年2月号122~123ページ)でインタビュー記事が紹介される。マルチモードにポリリズム、スリル、スピードの煌めくCPJサウンドは、このJunky Funkによって具現化され始め、
その後、ベースに岡田治郎が加わり多次元的にマレーシアなど海外でも演奏され大好評を博している。


Jack-in-the-Box / Junky Funk

鍵盤楽器のCPJの記念すべき第1弾 ! CPJ開闢の軌跡!

cd_junkyfunk01
Jack-in-the-Box / Junky Funk   EWCD-0018 イーストワークスeweレーベル

Jazz Life (2000年4月号94~95カラーページ)にインタビュー記事が掲載されました

1. 4.JF004.Jack-in-the-Box(びっくり箱)
2. 10.JF010.Fuajck(Fusion Jazz Rock) 
3.36.GX006. Fireworks(打ち上げ花火)
4. Seascapes(海の見える風景)
5. 34.GX004.Oceanfront(海沿いをゆく)
6. 5.JF005.J&F(JとF)
7.1.JF001.Junky Funk(がらくたのようなわけわからないもの!?)
8. 39.GX009.High-Energy Stuff(いきのいいやつ)
9. Disillusion(覚醒)
10.The Crack of Flaming Dawn(夜明けの眩い光)

All Compositions by Akihiko ‘JOKER’ Matsui (松井秋彦)

Akihiko ‘JOKER’ Matsui(松井秋彦) Keyboards
Eiji Otogawa(音川英二) Saxes
Tomoya Tachikawa(立川智也)Bass
Ittoku Shimamura(嶋村一徳)Drums
Yoshiko Saita(斉田佳子) Voice

http://www.amazon.co.jp/Jack-Box-Junky-Funk/dp/B00005EZRY/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=1329230897&sr=8-3

http://www.hmv.co.jp/product/detail/574571

 
 
 

Bird’s Eye Prospects / Junky Funk

鍵盤楽器のCPJ楽曲の新たな境地を縦横無尽に!Junky Funk第2弾!

cd_junkyfunk02
Bird’s Eye Prospects / Junky Funk  CSNT7001(キャスネット)
ジャズライフ(2003年2月号122~123ページ)でインタビュー記事が紹介されました

1. 3.JF003.Straight Flush 
2. 35.GX005.Ondo Ondo
3.22.JP002.Funky Funk 
4.143.FS013.Vinterhavn
5.50.FS010.Far East Jingle
6.8.JF008.Cyberjaya 
7.43.FS003.Bird’s Eye Prospects 
8.Sarajevo

All Compositions by Akihiko ‘JOKER’ Matsui (松井秋彦)

Akihiko ‘JOKER’ Matsui(松井秋彦) Keyboards,Drums on”Sarajevo”(R-ch), Bass solo on”Funky Funk“,Body Percussion & Reciting on”Bird’s Eye Prospects“)
Eiji Otogawa(音川英二) Saxes
Tomoya Tachikawa(立川智也)Bass
Ittoku Shimamura(嶋村一徳)Drums

Guest Musicians
竹中俊二(Guitar) on”Sarajevo”
大山大輝(Wurlitzer) on”Sarajevo”
江原陽子 (Voice) on “Vinterhavn,”Bird’s Eye Prospects
岸川恭子(Voice )on “Far East Jingle
松本俊行 (Organ)on”Sarajevo”,Keyboard on “Funky Funk

http://www.hmv.co.jp/product/detail/489063


Junky Funk 楽曲の曲想紹介



1. JF001. Junky Funk           

                             東京, Japan

なんて美しい音だ!

たまたま人間に生まれてきて

20Hzから20kHzまでぐらいの音が聴こえる聴覚を持っている。

それは宇宙の周波数の中ではほんのわずか一部ではあるけど、

人間の聴覚はとらえてくれる!

そして人間はその素晴らしい音の中の

あらゆる旋律と、

あらゆる和声と、

あらゆるリズムを、

認識してくれる!

つまり、

限りない音楽のメロディの組み合わせと、

限りなく垂直に、そして平行に伸びるコードと、

限りないリズムの組み合わせがある。

メロディとコードとリズム!

その三つの楽しみを、

限りなく、

極限まで、

とことん旅してゆくと、

CPJになる。

CPJは、とことんまで欲張りな

音の色彩の旅だ!

その組み合わせだけでも、

とことん掘り下げれば、

無限に拡がる

煌びやかな音の、

くっきりした色合いが出せる、

音の色彩のパレットだ!

なんて美しい色彩だ!

たまたま人間に生まれてきたけど

人間の網膜の視細胞には

桿体細胞だけでなくて

錐体細胞があるのが

なんとも幸運だった!

その中でも

L錐体が赤よりの長い波長を

M錐体が緑などの中間的波長を

S錐体が青よりの短い波長を捉えてくれるので

それを組み合わせると無限の色彩を捉えられる!

でも、人間の視覚が捉えている波長なんて、

この宇宙の波長の中のほんのわずかな限られた部分だ。

でも、

赤、橙、黄、緑、青、紫、、、、、

と煌びやかでくっきりした色合い

そしてその間にある

朱色、山吹色、黄緑、青緑などの繊細な色合い

これらの無限の色合いは

音によっても

表すことができる。

無限に続く色合いの旅

錐体細胞の奇跡を

全ての可能性を

旅することが

人間に齎された

究極の贅沢だ!


2. JF002. Funky Junk           

                    New York, U.S.A.

日本はいろいろなことが世界一の国で、

勤勉さ、

道徳心、

サービス精神、

武士道、

衛生面、

治安、

器用さ、

テクノロジー、、、

挙げたらキリがないぐらいに素晴らしい国民を擁している。

アメリカは歴史は浅いが、

左脳で捕らえられるような、

具体的なものの分析力には凄まじいものがある。

それによって、

限りない可能性を秘めた持続的発展性のある秩序がある

「ジャズ」

においてのジャズ理論でも、

「野球」

という緻密でバランスの取れた頭脳的スポーツにおいても構築されて、

この「ジャズ」と「野球」と言う、

ある意味全く関連性のないとも思われる2つの圧倒的な

「機能的で持続的発展性を持った娯楽」

がおれを魅了した。

「ジャズ」

は、知れば知るほど、

驚異的な秩序を持った持続的発展性を持った複雑な理論形態を持ち、

奇跡的な機能調性の、

淀みなく平行的にも垂直的にも変容し続ける和声が、

違和感なくメロディーとの整合性を保って進んでゆく構造を誇示しているし、

それらのハーモニーに対する、

トーナルセンターからの距離などで割り出されるあらゆる複雑な音階の可能性は数多あり、

場合によっては一瞬一瞬で変化し続けるあらゆる音階の中から

粋なリック(フレーズ)を紡ぎながら、

尚且つ違和感のないように繋げてゆくと言う、

ある意味気が遠くなるような天文学的難易度のことをジャズマン達はやっているのだ!

「野球」

は、知れば知るほど、

ピッチャーがあらゆる球種の変化球を操り、

コースと高さと、

あるいはボール球まで使って、

しかも、その時のアウトカウントとか、

ランナーがどこにいるかで選択が変わって来る上に、

ボール、ストライクのカウントが一つ変わる毎にベストな選択肢も変わる上に、

明らかなベスト選択のウラをかくこともあれば、

ピッチャーも人間だからコントロールミスすることで思わぬコースに球が行くことがあるのを含めて、

あまりにもあらゆる可能性に満ちている。

そのアメリカは奇しくもこの2つの、

「永遠に飽きの来ない娯楽」

を見事に与えてくれた国ではある。

自分の生まれた東京と、

対称の位置にあるような気がするのが、

アメリカのNew Yorkだ!

首都だかどうだかはどうでもいい!

アメリカのエネルギーの中心はここにある!

そんなことはわかっていないある時、

Bostonに留学していた時なら近かったのに、New Yorkにわざわざ日本から行った

ジャズをやっているにも関わらず、

先端的なジャズであるCPJではジャズらしさに固執するのでもないこともあって、

セミアコやフルアコでなく

ストラトをメインのギターにすべく、

New Yorkのマンハッタンから外れて、

F Lineに乗ってBrooklynにゆき、

Sadowskyさんから直接Sadowskyのストラトを買い付けに行ったのだ。

日本の東京とアメリカのNew Yorkは別々のパラレルワールド上にある同じ都市だったのかもしれないと思うことがある。

それはもしかしたら、

「左脳宇宙(New York)」と、

『右脳宇宙(東京)』なのかも知れない。

そして、左脳も右脳も必要不可欠であり、

左脳と右脳は対照的でありながら相互に作用し続ける。

芸術は右脳でやるべきだが、

左脳はそこに更なる選択肢の泉を補給する大事な役割を果たしているのではないか。

日本が加工貿易の名手であるのは、

海外で発達してきたものに、

ハイテクな技術や知識で磨きをかけているように見えて、

実はアメリカで発達した具体的なあらゆる題材を、

『右脳』

を通して更に輝かせているということに他ならないのではないか!?

『右脳』そこが人間のアイデンティティーであり、

「左脳」だけでできることはどんどんコンピューターに追い抜かれてゆくだろうこの地球において

最後まで奇跡の力を発揮するのは、

「西洋医学」より『東洋医学』、

「左脳」より『右脳』ではないか?

そして更には、

『右脳』は最初から人間の素晴らしいアイデンティティーな中で、

人間の「左脳」はコンピューターには遠く及ばない為、

生涯の間にその意味合いを、

「左脳開発が最終目的ではない」という認識さえあれば、

存分に生涯かかって左脳を開発する意味もあり、

それが本来持っている人間のお家芸である『右脳』の力を

補足して最大限に生かすことにつながるのではないか?

ということを、

東京とNew Yorkの関係性に想いを馳せる時に、

再度気づかされるのだった。



3. JF003. Straight Flash            

                           Berlin,Germany

奇抜な形状のフンボルトボックスの中にある、

誰でも寝っ転がってよい不思議な空間で、

今回のツアーのことをなんとなく思い出していた。。。

「今どの辺りですか?」

『チェコの西側を走ってます』

「走っているとは?」

『車です!』

かれいどすけーぷのベルリンでのコンサートの

主催者は半ば呆れた声であったが、

もともとどんなツアーのときでも、

前後になるべく旅をするのが当たり前になっているのだ。

留学していたボストンから東京に帰るときですら、

ヨーロッパまで飛んで、

フィンランドからシベリア鉄道に乗り、

ナホトカから船で横浜港へ帰ったぐらいだ。

今回はベルリンのみでの演奏なのに、

フライトはフランクフルトからだった。

普通なら飛行機を乗り換えてベルリンに入るのだろうが、

陸がある限りなるべく陸で移動する主義なので車を借り、

ドイツ北部の広大な平野を縦走するのでは、

アメリカのプレイリーや、シベリアの平原のように単調なことだろうと、

やや東に膨らませてチェコを通って、

エルベ川沿いを北上することにしたのだ。

チェコから急東ドイツのザクセンスイスへと抜けるルートは変化に富み

予想を遥かに超えていたが

ベルリンの壁が崩壊してだいぶ経ったベルリンにたどり着くと

新しい文化芸術の拠点と言えるような

活気に満ちた光景が待っていた。

そこでも伝統を守り続ける中世の面影を残す街並みをも残しながらも

東西分立時代の鬱積した空気を取り払うべく

完全にコンテンポラリーな未来都市の衝撃がその伝統を凌駕する。

まるで今までの対立の歴史は

この文化芸術が完全に払拭して

もう過去の人類が経験した過ちは

もう全く今のこの清々しい時空に関与する余力はなく

この解放された空気は完全に浄化されて

祝福されているものだと言わんばかりに。


4. JF004. Jack in the Box            

                              Graz, Austria

現代美術の巨大なコレクションの中にでも迷いこんだかのような

グラーツの街並みを眺めながら、

全く同じ街とは思えないほど違うイメージだった

昔のグラーツの旅のことを思い出した。。。

列車は突然停まり、乗客は皆降りるように言われて、慌てて列車を降りた。

ウイーンからグラーツに向かう列車に乗り込んだ途端にうたた寝していたらしい。

一体どうなっているのか?

気がつけばどうやら近郊までしか行かない短距離の列車に間違えて

乗り込んでいたらしいとこが判明した。

方向はあってはいたので、

仕方ないからここから出るグラーツ行きを待つ間、

駅舎にあるレストランでカルボナーラでも食べて待つことにした。

少ししてから、あることに気がついた!

持っていた筈の荷物を3つも列車の網棚に忘れていた!

慌てて駅員に尋ねると、

どうやら駅長らしかった実直そうな男は言った。

「君はこれからどこに行くんだね?」

「グラーツです」

「そうか。今の列車は今ウイーンに戻っているので、確認してみよう」

そして、彼はどうやらウイーンに連絡をとって、ほどなく、

「そのまま旅をして大丈夫だ。君の荷物は全部後でグラーツに届くように手配したよ」

と心強いことを言ってくれた。

車窓にはオーストリアの山岳地帯の風景が次々に明るい閃光を放っていた。

食堂車のカウンターでは人々が会話をしている。

ある地元の女性が語りかけてくる。

「どう?オーストリアの風景は?」

「うん。素晴らしいね。」

「ここオーストリアは本当に美しくて、どの地域にもそれぞれの美しさがあるのよ!」

そのオーストリアの奥深さに気がつくのにはこの後何十年かはかかることになる、

その後自分の車両に戻ってから、近くの乗客に尋ねた。

「グラーツでめちゃ安い宿って知ってますか?」

「あ、それだったらYMCAがオススメね。駅からも近いですよ!」

「これでは全然足りないね」

フロントの初老のおじさんは

おれの身なりを見てのことか

はなっからここに泊まれるお金を持っていないと決めつけていたかのようにおれにこう言った。

『細かい方から出しただけだよ』

と言いながら、そこの宿の、一回の食事と変わらないぐらいに安い額を出すと、

彼は安心した面持ちになり、

無事に部屋に入ることができた。

荷物、

と言ってもほとんどの荷物は今手元にないのだが、

唯一持っていた荷物を部屋に置いて、

駅に戻った。

山々に囲まれる寂れたグラーツの街に陽は落ちてきて、

ようやく、おれの荷物が乗せられて来ている筈の列車がプラットフォームに入線してきた。

遠くから様子をみるしかないが、

どうやらグラーツの駅員さんが、

列車が止まるや否や運転手に窓越しに話しかけるのが見えた。

しかしその小太りの運転手は首を振り、

そんなものはなかったよ。という顔をしている。

そして一瞬の間があって、

運転手は悪戯っぽく笑った。

そして、一つ、二つ、三つ、とおれの荷物を運転席の窓越しに駅員に渡した!

まるで遠くからおれが見ているのを知ってるかのように。


5. JF005. J&F        

                 Boston, U.S.A.

「一体どんなヤクをやるとそんな曲が書けるんだ?」

と言われることが多かったボストン留学時代。

考えてみれば、

もともと飽きっぽく、

商業的な音楽を最初から聴くこともできず、

強いて言えば、五歳の頃までは、

グループサウンズの追っかけをやっていたが、

一般的な音楽をミーハーに聴いたのはそれまでだった。

高校までには、

リズムが分からない音楽はだんだんなくなり、

留学時代にはハーモニーがわからないものがなくなり、

自分にとって謎めいた音楽がなくなってしまった。

だからこそ自分にわからない、

ドキドキする音を得るには、

自分で謎めいたものを創らないといられない!

調性とリズムが同時に難解な曲を、

大学一年か二年の頃から書き始め、

それらを演奏させられたりする周りの学生達はおれを不思議がった。

それでもそれが可能な限りは、

その当時のバークリーのプレイヤーの界隈では、

「自分にできないものがあるなんて放って置けない!」

というのがある程度当たり前の感覚だったので、

プレイヤーを探すのは容易ではあったが、

本当にそれらの楽曲を演奏できるところまではなかなか辿りつかなかった。

その当時のバークリーでの演奏機会の中では、

パフォーマンスセンターで演奏するのが充実した環境での演奏だった。

それに出場する為のオーディション用の音源もなかった時に、

前例ないマルチプレイヤーだったことを生かして、

マルチトラックの録音機材でピアノ、ギター、ベース、ドラムを重ね撮りしたテープでオーディションを通過してしまった!錚々たるパフォーマンスメジャーのプレイヤーも自分の先行楽器でも通らず断念していたことで

若干の罪悪感もあったが、

全ての楽器での演奏が認められ、

四刀流が始まった瞬間でもあった。

パフォーマンスセンターでの公演があるというモチベーションで

かき集めた気鋭のプレイヤー達で開催したコンサートのタイトルは、

自分にとって最も理想的な形状をした2つの文字、

J & F 」だった!


6. JF006. Metropolis        

        Scolopi,Italy

『スコロピへ行くバスはここから出ていますか?』

もう日が暮れてきてしまったローマの外れの地下鉄の駅で

全くわからないスコロピという場所のことを尋ねるのに

何の躊躇をしている暇もなかった

駅前のロータリーで

大柄の警官が三人も屯していたところに

すぐさま駆け寄って尋ねた

三人の間でしばし会話があってから

そのうちの一人が

「このバスに乗るといいよ!」

と言った

言われた通りに

全くガラガラのバスに乗り込み

灯りひとつ見当たらないような

暗い通りを疾走するバスに

身を委ね続けた

するとほどなくして

運転手が

「ここで降りろ」

と言い放った

「あの、お金は?」

と尋ねると

そんなものはいらないという素振りをした

それでなんとなくわかった!

そもそもスコロピに行くバスなどはなく

空いているバスの車両を使って

送ってくれたのだった

そんな素晴らしい配慮があったのだが

降ろされた土地は

真っ暗な夜の

真っ暗で何もない境地

行こうとしている宿がこの辺にある筈だが

ありそうな気配すらない

車道からそれてゆく道はひとつしかないので

その真っ暗な道を

信じて歩くしかなかった

しかし

程なくして

こんな暗闇の先にあるとはとても思えないような

洗練された建築物が

忽然と現れ

その数分後には

想像してもいなかったような

コンテンポラリーな空間で

次の夜明けを待つことになった


7. JF007. Out of the Blue      

         Coll de Boixols

Empty Empty!

「どういうことだいそれは?」

「つまりガソリンは最初空っぽだけど、返す時も空っぽで、ということだよ」

なんとも個性的な方針の

バルセロナのユル~いレンタカー屋であるPepe Carで車を借りて

適当にアラゴン州のピレネー山脈へ向かって車を走らせることにした。

バルセロナから北上するとそこはあっという間に別世界

ダイナミックな山塊を背景にした

趣深いこじんまりした集落をいくつも通り

こんなところに住んだらどんな感じなのだろうと思いを馳せながら

だんだんカタルーニャからアラゴンへ流れ込む

個性的で変化に富んだ山容に

どこか別の星に迷いこんだような感覚を覚える

巨大な変形の三角形のどっしりとした山が景観を引き締めるオルガンヤという村落で

陽がかなり傾いてきた

『この村にどこか宿はないかい?』

外でくつろいでいた村のおじさんに尋ねると

「なくはないが、空いてないかもなあ」

確かにこれだけ山奥で宿を期待する方がおかしいのかもしれない

どうやらこの村では泊まれないとわかり

岩の上に美しい集落を有するコル デ ナルゴからなんとなく右折すると

アルゴンの山中に向かう道に入り込む

もうすでに宿がある限界の村は過ぎているのに

更に山奥の

家一件見当たらない自然の中に突き進む

どこかで宿を探そうと思っていたのに

まるっきりそれを諦めさせるような

手付かずの自然の中に入り込む

あらゆる岩山のオブジェのショウケースだ

そんな時に突然

何もない中に

Cassa Sobre Rocca

という標識のような看板に

ベッドのマークがついていて

山道から更に分岐してゆく脇道へいざなう

半信半疑ながらそのオフロードを進んでゆくと

忽然と現れたのは比較的大きな建物だ

巨大な番犬に迎えられ

中から女の人が出てくる

『ここは宿ですか?』

「はい、そうですよ」

『なんと!今夜は泊まれますか?』

「はい、、、、、なんとかなると思います」

かくして、

この世とも思えない奇岩の山塊に囲まれた大自然の中、

他には家一軒も見当たらない山奥で、

無事に一晩を明かすことになった。


8. JF008. Cyberjaya      

        Cyberjaya, Malaysia

「もういっちょ行くか?」

というようなジェスチャーで、

そのマレーシア航空の人なつっこいスチュワードは、

もうすでに床がビール瓶などで埋まっているおれの席にだけ愛想よくお酒を持ってきてくれた。

別にただのエコノミーで、特にお金を払うのでもないのに、一体何杯いろんなお酒を飲んだのか覚えきれない。

まあ、全然飲んでない人がほとんどな中で、

飲兵衛だけにバンバンお酒を出しても採算が取れるのだろう。

それにしてもなんて自由な空気なんだろう!

マレーシアに行く2度目のツアーに、

既におれはクアラルンプールの近くの地名に因んだ曲を携えて勇んで向かう機内でのことだった。

そのせいか、現地入りしてすぐに始まったリハで、

難しく書き過ぎたこの「Cyberjaya」のリハーサルをして、

何度も何度もこの無限ループのようなリフを

メンバーが叩き込んでいる間じゅう、頭痛に襲われた。

普段お酒には強いのだが、

機内での飲酒の影響はかなり次元が違うものだった。

KLというのは不思議なところで、

何度もあったこの遠征の間じゅうだいたい夜中までジャズの演奏は続き、

かなり深夜になってからも普通にお客さんは入ってくるもんだった。

ツアーの主催者はKLのあちらこちらの格調高いお店から屋台まで、

幅広い飲み屋や食堂へ連れ回してくれた。

深夜までの演奏が終わってからだからそれは時には明け方まで。

そんなこんなでKLの周りをあちらこちらに移動している間によくみかけて気になった地名が

まるでCyberな茶屋という響きであり、インターネットカフェという概念を彷彿とさせる

Cyberjaya」だった。

この曲も、その後、何度となくマレーシアでも演奏されることになった上に

帰ってきてから日本でも、

相当な数のプレイヤーによって演奏されることとなった!



9. JF009. Brand New Life    
          Birmingham, U.K.

電話を持ってないのが運のつきだった!

とってあったはずの宿の近くについたのがもう夜中だ。

しかし、住所を見て、番地を見ても、

夜中の町外れは静まりかえり、

灯りがついている住居が見当たらない。

しかも街灯があまりない為、なかなか番地を見るのも困難だ。

これで宿に人がいなければ、どうにもならないし、

しかも電話も持っていない。

おそらくこの辺りか、というところに一件だけ灯りがついているのを見て、

ブザーを鳴らしてみると、

中には老人が佇んでいて、明らかに宿ではない。

もう半ば諦めそうになったところで、

それらしき建物にたどり着き、

ブザーを鳴らすと、

中からインド系の女性が出てきたのだ!

「こちらですか?宿を予約してたものですが」

「そうよ。ごめんなさいね。わかりにくくて」

ヒースローから車を飛ばして夜中に着く予定だったから当然素泊まりを想定していたが、

その気さくなインド系の婦人は、

「パーティーがあったから散らかっていてごめんなさいね。

その代わりと言ってはなんだけど、ここにあるもの、もしよければなんでも食べてね。」

寝るだけのためにとっていた安宿ながら、そんな経緯で、

絶品のインド料理が食べ放題な状態で、

しかもインテリアがとてもイギリスっぽくないユニークな宿で、

エキセントリックな時間を過ごした。


10. JF010. Fujack              

      Toronto, Canada

メリーランド州のシルヴァースプリングで間借りしていた頃のとある朝、

朝刊を眺めていて、大リーグの野球のことが気になり出した。

その年のアメリカンリーグでは、夏の時点ではもともと日本でも知っていたNew York Yankeesよりも上に、

Detroit Tigersがいて、更にはToronto Bluejaysがその上でトップを走っていた。

そしてテレビのニュースからもある時、「Toronto Bluejays continue to be strong…..」というのが耳に入ってきた。

その頃に、そんなに強いチームを擁するTorontoというのは一体どんな街なんだろう。と気になっていたのだ !

その後、たまたまアメリカ北部から彷徨って、カナダの東部に足を踏み入れる機会があった時に、真っ先に思ったのが、このTorontoという不思議な響きの地名だった。言語学的にはモホーク族の言葉で「水の中に木が立っている場所」を意味する「tkaronto」

が元になっているらしいだけに、英語圏の地名らしからぬスペリングであったのだ。

首都はOttawaであり、

知名度ではMontrealやVancouverには及ばない気がするこのある意味中途半端な街であるTorontoだが、

たどり着いたその衝撃は大きかった。

まるで20年ぐらいあとの世の中を反映しているような、

超未来的なショッピングモールや、

Torontoの極彩色の夜景を捉えられるCN Towerを擁する美しい都市であって、

それまでに見たどのアメリカやカナダの北米の都市よりも、飛び抜けた虹彩を迸らせていた!