Fringeのドラマー Bob Gullotti氏逝去

ボストン在住ドラマー Bob Gullotti 氏が 去る1/25に70歳でこの世を去った。

KワーナーやJロバーノとの共演、そして何よりもGガゾーンとのトリオ”フリンジ”はボストンでは絶大なる人気を得ていた。
完全即興のトリオである”フリンジ”は毎週水曜日にボストンのとあるライブハウスでずーっと彼が亡くなる寸前まで40年以上も活動していた。

ボブが亡くなった二日後は奇しくもフリンジのライブ日で、彼のドラムセットだけがステージに組んであって、メンバー二人(G・ガゾーン、J・ロックウッド)が悲しみにくれていたとか、、外にはかなり大勢のフリンジファンが訃報を聞きつけて集まったそうだ。

 

手元にあるMD(元はカセットだった)は僕の留学時の1990年2月、今からちょうど30年前!

フリンジのステージにはいつもノックアウトされた、何も決めずにやっているとは思えないくらい、それぞれのセットが一つの広大な物語のように展開して、途中様々な景色を見せてドラマティックにエンディングに向かう。
毎週のことなので、メンバーの誰かが都合悪くなることもあった、そんな時は別に代理を立てて違うドラマーやベーシストがやることもあって、それはそれで興味深かった。

どうだろう今までに最低でも20回くらいは彼らのステージを聴いたと思う。何度も予定を合わせて、ある時は友人を誘って、ある時は一人で夜のバスに乗ってクラブまで通ったことを思い出す。
毎週水曜なので、行けなかったらまた来週!みたいな感じだったけど、毎回演奏は凄かった。

チャージは確か5、6ドルとか高くても10ドルくらい??だったと記憶しているが、当時貧乏学生の自分には結構な出費だった。
演奏を聴いていると、この環境で自分もステージに上がって演奏したいとよく思った。
ベースのJ・ロックウッドとは、その10 年後にレコーディングで一緒になるのだが、

 

 

指導者としてのボブを敬愛している生徒も沢山いた。
僕もある時、そのメソッドに興味を持って彼の自宅にレッスンに通ったことがあった。
必要なことを毎回かなりコンパクトにまとめて彼に尋ねたら、いつもかなり的確な答えが返ってきた。

演奏していてフォームがわからなくなった時にどうするか?とある時尋ねたら、彼がJロバーノの結婚式か何かのパーティで、ゲストで呼ばれた時に、エルビンや、メル・ルイス、その他のグレートドラマーと同じステージで順に演奏しなければならなかった時、複雑なフォームの曲をコールされて、演奏中に只々必死で小節を数えたという話。

 

あと「カズミは絶対マッチドグリップ(左右同じ持ち方)にした方が良い!!」と何度もアドバイスされた。
当時は確かBスチュワートが台頭してきた頃で、ボストンでもマッチドでプレイするジャズドラマーが急増した頃だったと思う。
その時はそうしなかったが、今となってはその意味が理解でき、全く彼に同意する。

彼のメソッドはCパーカーのソロを一字一句完全に歌えるようにして、それをドラムセットに解釈してプレイするというものだった。
この練習法には賛否両論あるが、僕も指導上で、口と手が一致しない生徒には引っ張り出してきて紹介することが今でもある。
自分はオムニブック(C パーカーのソロのコピー本)の途中アップテンポのconstelallationくらいまでは練習した、、、それでも本全体の1/3にも至らない。
彼は全ページ完璧にできる。

 

彼の演奏の特徴は、音が出るタイミングがこちらが予想しているよりも若干早く、言いようによっては立ち上がりが早すぎるくらいの感じがある。
でもこれが、彼のドラマー魂みたいなものでイタリアンの血がそうさせるのかな?と思っていた。
それがまたフリンジのテナーそして世界的プレイヤーのGガゾーンとの相性が抜群!とにかくヤンチャな二人が遊んでいる感じが男の子の遊び心をくすぐるのだ、、
そしてトリオとしての構成力の素晴らしさ! 僕はフリンジでプレイしている時のボブが一番好きだ!

そしてそのボトムをJ・ロックウッドの紳士的だけど大らかで躍動感のある、オリーブオイルのように滑らかなベースがしっかり支えている感じ。
B・シーガーとのCD録音の時、スタジオで速めのスイングの曲で演奏していてヘッドフォンからロックウッド氏のランニングベースが聞こえてきた時「やった!!フリンジ降臨だ!!」と絶叫しそうになった。

 

フリンジ結成30 周年だったか?のコンサートに行った時、そこはボストン郊外にある古いシアターみたいなところで、お客がおそらく9割以上男性だったと思う、女子トイレの前はガラガラ、方や男子トイレだけ物凄く長い列ができていた。

彼らの音楽は男であれば誰しもが、心をくすぐられる何かを持っていた。
それはプラモデルを作ったり、スポーツカーをかっこいいと思うような、男にしか分からない感覚に近いのかもしれない、、

まるで70年代のロックバンド、グランド・ファンクのライブを彷彿とさせるような会場の雰囲気で熱〜いライブだった、
そこら中で歓声が上がり、おそらくそこは400人くらいは入るだろうか、、会場は男の熱気で汗臭く、「イエー」という歓声もドス黒く「ウエ〜い、」という感じで、トーンが低く、ドスが効いていた。

100%インプロバンドのフリンジは、3人それぞれがボストンに限らずアメリカを代表するジャズプレイヤーなのでロックでカッコいいけどジャズ!
コルトレーンの音楽に近い何かを僕は感じる。我々男子は心を掴まれて「ウエ〜い」となってしまう所以だ。

 

現地の友人にメールを送ったら、ボブを知るみんなが悲しみに暮れているそうだ。

僕は彼は実はすごく繊細な人だったんじゃないかと思う、レッスンを受けていても彼なりに物事をもの凄く深く考えたんだろうなと思う事が多々あった。
叩き上げのアーティスト、そしてフリンジの実質リーダーでもあり、素晴らしい指導者。

少しの間だが彼のレッスンを受けられて本当にラッキーだった🙏

物事はいつかは終わる、そして時代は変わっていく、
また次の時代につながっていくのだろう、

ボブさん本当にお疲れ様でした、、Thank you Bob!! Rest in peace..

そしてフリンジはこれからもずっと僕に限らず多くのファン達のヒーローであることは変わりない。

フリンジは永久に不滅なのだ😎


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