☆47 教えることから学ぶこと

ジャズマン、というのはある意味特殊な生き物なのでしょう。

演奏内容にこだわればこだわるほど、演奏では食べてゆくのが大変になるので、教える、という仕事を並行する人が多い。更に、演奏したい内容を絞れば絞るほど、経済的には教える仕事の割合がどんどん増えてきたりする。
そうすると、一般的には、この人は
「教えるのが好きなんだろう」とか、
「先生なんだろう」とか、
「演奏は引退した」とか、いう風に解釈してしまう人が結構いるのですが、
わかりにくいことにそうでもなく、それどころか、たくさん教えている人に限って演奏を中心に考えていたりします。
なぜなら、
こだわりを持って演奏しているジャズマンにとって耐えられる内容の演奏の仕事は限られているからです。
「最初から教えるのが好きなジャズマンはほとんどいない」ということも言えるでしょう。
さて、僕の場合は、教える仕事をし始めてからもう四半世紀は経ちますが、
最初は僕も特に教える仕事自体に興味があったわけでもなく、
教えるのに向いていたということもなく、
背に腹は代えられず脇目も振らず始めたわけですが、
奥深いジャズの理論や、ピアノ、ギター、ベース、ドラムの技術を教え続ける中で、多くの発見をしてきました。
しかも、その多くは上級者のレッスンよりも、初級者のレッスンで起こるのです。
たとえば、
「先生、このケースでは、このヴォイシング(コードの音列)でいいでしょうか?」
と、ギターやピアノの生徒でそれぞれ、よくあるシチュエーションを凌ぐためのヴォイシングを思いついて、
「わ〜それ、いいかも!?そんなの考えたこともなかったよ!」
と言いながら、その後、そこを教える場合にはいつも使うようになったり、、、、、。
最近よく思うのは、ベースやドラムの生徒が、どうもノリが出ないなあ〜と言う時、
一生懸命耳を澄まして、目を凝らして、演奏をチェックすると、
有りえないようなフォームで演奏していたりするのです。
そういうことがあると、生まれて初めて、こういう場合にはフォームの細部はどうあるべきなのか、
全く考えたことがなかった概念に関して掘り下げ始めるきっかけになるわけです。
そんなこんなで、奇しくも、選択の余地なく始めた教える仕事は、
単に演奏しているだけでは得られない
「気付き」
の宝石箱で、ここから学ぶことの多さには日々感謝しています。